ジェーン・マーチとスイートピー
早朝、電話に起こされた。「愛人/ラマン」について知人からの物だ。
主演女優のジェーン・マーチは、この映画の撮影中、毎日辛くて
泣いていたという物で、知らなかった私は驚いた。
ジェーン・マーチは、1973年にロンドンに生まれた。
私が観たのは、1994年の「薔薇の素顔」とこの作品だけなのだが、
スリムなボディに、SEXシーン全開で、こういう路線の女優なのだと
思っていた。
「愛人/ラマン」の時には、19歳でその若い、まだ若い薔薇のつぼみの
様な心の頑なさを感じた。
<そうか~、ジェーンは辛かったんだ~>
自分が裸になるのが辛かったのか?
マルグリットを思って辛かったのかは解らないが、辛いという感情を
持ち続け撮影に望んでいるとしたら、それは、何処かに現れていただろう。
退廃的な時代や風景の中だったかも知れないし、ラストの船の上のシーン
だったかも知れない。
「薔薇の素顔」はサスペンスで、ブルース・ウイルスを悩ませる悪魔の様な
女を演じる。
いつでも、心の内を顔には、表さない。
* * * * *
「辛い!」そう言って、Kは4年前に亡くなった。
まだ、高校生だった。
Kの母親は教育者で、私の知人だった。
今でも、時々、会っている。
Kは中学の時から、登校拒否になり、高校は通信制にしていた。
中学の時には、一人でもイギリスやアメリカのホームスティを経験する積極性
があり、哲学書を片っ端から読み続けたりしていた。
「お母さん、もう、疲れたよ!」
と言って、最後の1ヶ月は、ペットボトルのスポーツ飲料しか、飲めなくなっていた。
そして、衰弱死に至った。
「衰弱死」これが、Kの死因となった。
私はスイートピーの花束を捧げた。(白とピンク)
スイートピーの優しさが、Kの元気な姿とダブった。
Kよ!
貴方が可愛がったり、ストレスからあたったりしたゴールデン・レトリーバーは
今も元気に暮らしているよ。
背中には、貴方の残した哲学書が積める程だ。
太っていて、私は「ダイエットしないと、成人病で危ない!から・・・・」と
言っている。
正しく、「哲学犬」なのだ。
静かに、Kを取り囲む時間を、共に生きた犬。
お母さんは、貴方が去ってしまった後、3年間、安定しなかったけれど
今は元気になった。
相変わらず、美しいよ。
そして、「すでに、亡くなっている医師の父親が、今はKを守っている」と言う。
辛く、疲れた時期を、Kよ。
貴方は土の中の球根のように黙って暮らしてしまった。
明るいスイートピーの如く、風に吹かれる事もなく・・・・・・
私はこうして書いている。
そして、忘れまいと思う。
こういう時に流れる涙は、誰にもぬぐえない。
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