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海の上のピアニスト

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『  太陽  』

今日は、最初に『太陽』を観て、次に『蟻の兵隊』を観た。
どちらも、太平洋戦争に関している。
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『太陽』は、それまで神と信じられていた天皇を、静寂の中で、一人の人間としての苦悩や家族の愛を、ロシアのソクーロフ監督(1951年生まれ)がイッセー・尾形(1952年生まれ)を天皇役として描き、プライベートな部分をメインに好意的に描いていた。
アメリカ人が描いたら、全く違う天皇に成っただろう。
好意的だったので、ほっとした。
当時の軍の力は強くて、天皇は、実際にはロボット状態だったと思うし、平和を誰よりも願いながらも、そう出来なかった責任者としての苦悩は、天皇を深い悲しみと孤独へ追い立てたのだと思うからだ。
それなのに、批判的に描かれていたとしたら、お門違いだと思っていた。


実際に、大正時代生まれの人や、昭和初期に生まれた方達にとって、『天皇』とは、遥か彼方の雲の上の人であった訳だが、戦後の『人間宣言』を持って、死を迎えるまで、ある意味において戦争責任を取り続けたのだと思う。
ある意味とは、生き続けて戦後の日本の再生を応援した事だろう。



皇后役の桃井かおりの登場するシーンは短いのに、存在感は大きい。
何時の頃から、こんなに上手い女優に成長したのだろうか?
前面に暖かさを、内面に優しさを含んでいて、その1カット、1かっトにそれらを吐き出すので、圧倒されてしまう。

イッセー尾形は、言葉少なく、静かに、時にユーモアを含んで、日本の天皇を演じていたが、彼でなくては、こんなに良い映像を我々に見せてはくれなかったと思う。
マッカーサーとの会見では、天皇を理解出来ない彼の苛立ちも見えるが、それは天皇とて同じだっただろう。事実はわからないが・・・
また、天皇と侍従との関係も面白かった。佐野史郎の抑えた演技が、鈍い光で、天皇を照らしているようで、印象的だった。

「あっそう!」という天皇の名文句は、何度も使われていて、イントネーションも全て、天皇に似ていた。そう、そう、何よりもイッセー尾形が、セリフを話す時に、口をモゴモゴとするしぐさは、そっくりで、名演技だった。

如何して、監督は天皇を描いたのかと言うと、1999年には、『モレク神』(ヒットラー)2001年には、『牡牛座』(レーニン)と、20世紀の怪物達を一人の人間として見つめる連作の第3作目として取り上げたそうだ。
「闇に包まれた国民の前に太陽はやってくるであろうか?」と自問していた天皇ヒロヒトの人間性に光を当てている厳かな雰囲気の作品で、昭和天皇を知らない人も、知っている人も、昭和史を語る前には、知っておく必要があると思う。



劇場は銀座のシネパトスで、9割方満席で、観客の平均年齢は高かった。
よろよろしているご老人も観に来ていたが、若い人にも是非、見て頂きたい。
淡々としながら、色彩や思い音楽に囲まれた映像の、芸術性のある作品だと思う。
監督が鬼才なら、イッセー尾形も奇才!


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by sea1900 | 2006-08-28 23:49 | 映画