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海の上のピアニスト

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『トランスアメリカ』

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一番最近見た映画は、『トランスアメリカ』なのに、どういう風にまとめようかと考えすぎて
一向にまとまらなかった。かみ締めれば、かみ締める程、味が出てきて、それが限り無く広がる幸せな映画だとも言える。
如何して、味が出るのだろうか?それは、ストーリーに<無理>という難題が存在していない事、自然体で進む事、フェリシティの繊細で、かつ深い演技力等からにじみ出る味わいだろう。
   
   『人生は旅だ』と、よく比喩されるが、ブリーが息子トビーと、ひょんな事から、ニューヨークからロサンジェルスまでを 共に、おんぼろ車で旅する事になった。ロードムービーでもあって、正に旅を通して生まれた感情は、何とも言えない物だった。

 ブリー役のフェリシティ・ハフマンはよき時代の女性像を心に焼き付けているのか、より女性らしいしぐさや、背筋をピンと張った 姿勢で、女性を強調させている。
 生まれ付き女性の私から見れば、自分の性を特に意識する事も無く生きているのに、性を超えて生きようとする人にとっては、その価値が重要なのだ。
 だから、女よりも女らしいブリーは、愛おしい人だと思った。
しかし、どう見てもフェリシティは、女装した男性にしか見えないのだから、すごい!長身だし、顔の骨っぽさが男性特有に思えるし、とても、女性には見えなかった。控えめな抑えた演技も、古風な女性を感じさせた。


  旅の途中で、ヒッピーに車と荷物を盗まれてから、ブリーは自分の実家に立ち寄る。ヒッピーの登場も、面白くて、本当にこんな感じで、泥棒される事はあるのだろう。旅の持つ危険をはらんだ楽しさだ。
 母親、父親、妹がそれぞれに、女性として生きるブリーに面白い反応を見せるが、母親は、息子には戸惑いを隠せないのに、孫のトビーを可愛がるシーンには、笑ってしまった。家族には、それぞれの問題があって、それを自然におかしく描いているので面白い。


  普遍的な話を普通に描いていると思うが、フェリシティ・ハフマンの演技の素晴らしさに圧倒され続け、トビー役のケヴィン・ゼガーズの若さの持つ宝に、将来の希望を見たのだった。(アダルト映画の俳優はちょっと、きつそうだったが)
トビーは、17歳なのだが、おバカで軽薄な青年のようだったが、なかなか味があって、チャーミング。リバー・フェニックスの再来と言われる理由が解ってくるし、現実のアメリカの青年という感じがするが、眼の光が魅力的で、繊細な心の内を表現してくれる。
光と影のコントラストを持ち、喜怒哀楽をとっさに表す事の出来る俳優だと思った。

  『ダンス・ウィズ・ウルブズ』で、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたネオイダ族出身のグレアム・グリーンの存在は、『ルーツ』
  的で、意味が深くて、存在感があった。ブリーとの、つかの間のふれあいは、若くは無い2人にそっと、幸せな空気を与えたようだ。
   『ルーツ』と言えば、ブリーのルーツは、女性にあるので、この旅はルーツ探しの旅でもあった。トビーにとっても、自分の父親の素晴らしさを知る、ルーツ探しの旅だった。

  旅を通して、共に成長する父子の姿を描いた自然体の映画で、『プルートで朝食を』と比較すると、現実的に描かれていて、ドタバタしていない点が上げられるだろう。
  見た後で、ほんわか~とした物が残り、現実離れしていない。

  脚本・監督のダンカン・タッカー氏は、この作品が長編デビュー作だと言うが、繊細な映画を上手く作り出せるそのハートに、細かくきちんと折り畳んだバランスの良い知性や感情を感じてしまった。そして、それらが上手くブレンドされているお奨めの映画だ。

家族の不思議な繋がりや、親と子の切れぬ縁、人と人との出会い、その中で確認して行く人の生き方は、旅の如く、未知数なのだろう。




   
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by sea1900 | 2006-08-07 00:08 | 映画