『コーラス』
『ニューシネマパラダイス』の音楽版とも言える作品で、
ジャック・ペランが自分の小さな息子や、甥と出演している。
ピエール・モランジュ(ジャック・ペラン)は、世界的な指揮者だが、母親の死の
知らせで、フランスに戻る。
夜、見知らぬ男が訪ねてくるが、彼は50年前に問題児を更正させる為の寄宿
学校で、一緒だったペピノだった。ペピノがピエールに渡したかったのは、かつて
この学校で、名も知れずに、唯の音楽好きだったクレマン・マチュー(ジエラール・
ジュニョ)の1949年、1月15日からここで始まった日記だった。
スポイルされている子供達に、歌を歌う事を教え、声を求める事も無く、
ひたすら子供を思う姿は、『パティニョールおじさん』の如く、決して、スマートでは
ないが、優しさに溢れている。
そして、何よりも、この映画の良さは、少年達の歌声にあり、その中でも、ピエール
のボーイ・ソプラノが素晴らしくて、宗教曲『キリエ』なども完成度が高く歌われていた。
と、思ったらやはり、彼はサン・マルク少年・少女合唱団のソリストだった。
サン・マルク少年・少女合唱団は、1986年にリヨンで、最も大きい教会の、ノートルダム
・トラ・フールヴィエール大聖堂専属合唱隊という。
ピエールの母親・ヴァイオレットに片思いしたり、マチュー先生も少しは、楽しみがある。
ピエールの才能に気づいたマチューはヴァイオレットに、ピエールを音楽学校に
進学させるように勧める。
人生とは、その長さではなくて、
多くの良い人との出会いの蓄積だと思う。
人との出会いは、実際の所、人生感まで変えてしまう。
ましてや、子供の時の人との出会いは、大きな影響力がある。
大人は、子供を出来るだけ正しい方向に導かねば成らないが、音楽が媒介した場合、
一番手早く、素直に楽しく出来るのだと思う。
マチュー先生が、ワンマン校長から解雇され、一人、去っていく時、窓からは子供達の手
と、歌声が鳴り響き、紙飛行機に書かれた手紙が桜の花びらのようだった。
それにしても、歌声に聞き惚れてしまった作品だった。
英語よりも、ゆったりとした感じのフランス語がノスタルジックな雰囲気をかもし出して
戦後の再生を、子供とうだつのあがらないような先生を通して、何が大切なのかを
説いているのだと思った。
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