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海の上のピアニスト

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『スタンドアップ』



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最初に、1975年に初めて、女性が炭鉱で働くようになったとイントロが
流れる。1989年には、その数は、男30に対して、女は1だったと続く。

シャーリーズ・セロンは、前作『モンスター』でも美しくない役を演じて話題に
成ったが、この映画でもその執念を感じた。

舞台はそんな1989年、ジョージー(シャーリーズ・セロン)は、お決まりの
父親違いの2人の子供を抱え、暴力亭主から逃れて、実家のある北ミネソタに
戻ってきた。お決まりと言うのは、日本よりも遥かに、結婚、離婚が多いアメリカ
にあって、父親違いの兄弟の存在は、良くある事と言う意味。

子供達と自分が生きていく為に、美容室のシャンプー係りの仕事をするが、
客として来たグローリーから、炭鉱で働くと、シャンプーの仕事の収入の6倍の
賃金だと聞いて、自分の家も欲しかったジョージーは、鉱山で働き始める。

鉱山と言っても、オートメーション化した大きな工場の様な物で、女性労働者は
何人かいた。

ミネソタの広大な敷地に鉱山は広がり、雪の白さと鉱山の黒い石とのコントラストが
リアルさを出している。殺風景な鉱山を殺伐な心しか持ち合わせない人間が鉱山
に負けじと動く姿は、小さな石のようだ。

しかし、男性社会に女性が入り込んだ状態を、男性が気持良く受け入れないで、
嫌がらせや、セクハラが繰返させられる。

これは、かなりキョーレツ!観ていてハラがたった。

まるで、映画『プーラン』を観た時の憤慨した気持と同じようだ。
女の敵は女ではなくて、女の敵は暴力で対抗してくる男だった。

暴力と言えば、、一番酷い事は、ジョージーが、高校生だった16歳の時に、
先生がレイプした事だと思う。

この事を黙っていたジョージーは父親の怒りをかい、以後、父親とは仲が悪かった。
父親はまさか、娘がレイプされたとは思っていなかったからだ。

ジョージーと息子とは、ジョージーの愛でちゃんと繋がっている。
『生まれよりも育ち』、育つ環境は大切だと教えてくれる。

炭鉱全体が、女性を追い払おうとパニック状態に成っているので、次から次と、
汚い手でイジメられるが、生活の為には、仕事を辞められない。

これらの女性に対する『暴力』の数々は、ニキ・カーロ監督(女性)ならではの
考えではないだろうか?男性の監督が描くと、きっと、『我が身に迫り来る恐怖』
とは、いかなかったと思う。

私は、ニキ・カーロ監督の『クジラの島の少女』に感銘を受けたので、この作品を
楽しみにしていた。女性監督の作品は、女性が観ると感覚的に違っていて、
視点が同じだと思う事が多い。

ジョージーは、鉱山で働いて、初めて、自分のお金で自由に暮せる喜びや、人間的な
心を得たので、ここでの低脳男達による締め出しには、我慢が出来なかったのだ。

勿論、『我慢』なんて、言葉だけが一人歩きしているだけで、言い換えれば、
本心を表さずに、と言うか現せずに黙っているだけの事だろう。

鉱山の黒い石を、ジョージーの元の姿とすれば、そこから生まれる鉄は、彼女の
生まれ変わり、成長し続ける姿でもある。

この映画はセクハラ問題を取り上げているのではなく、世界中に点在するそれまでの
男性社会に、女性が進出するという生き残りを賭けた戦いの物語だろう。

父親との和解のシーンは、素晴らしい。
父親はジョージーの姿に気高さを察し、誇りを感じたのだった。
父親役のリチャード・ジェンキンズの表情が、冷たさと無視から、温かさと理解に変化
していく過程も別人の様に演じていて、上手かった。

女性が男性社会を奪うのではなくて、共に働きたいのだと解ったのだ。

共に鉱山を愛して、ここで働ける事を誇りに思いたいだけなのだ。


グローリー役のフランシス・マクドーマンは決して美しい女優ではないが、存在感が
あり、病に倒れても、気丈さを失わない。

母親は黙って夫についてしか生きてこなかった人なのに、心に変化が現れる。
その変化を、シシー・スペイセクが、セリフの少ない中で、ほとんど顔だけで、
表現していて、『やはり上手い!』と思った。


ジョージーの成長を縦軸に、他の人間の成長を横軸にクロスさせて、雪の積もる
北の町を背景に描いているが、ラストは爽やかで、カキ・カーロならではの伸びや
かな自由な雰囲気だった。

誰にでもある、立ち上がらなければ成らない時。
その時、人は立ち上がって、言葉で、戦わなければいけない!

立ち上がる時、同意してくれる人がいたら、その人は友達だ。

生きていく事は、良い事ばかりではないけれど、大変な事の中にも、
『良かった!』と思える事もあるし、感心する事柄も生まれる。

自分が成長できる事は、生きていて何よりの宝物となる。


たった1000円で夜に見た映画だったが、私は行く事もない鉱山の中を見学でき、
人の心の成長を見て、満足だった。

こうして、アカデミー賞の候補作品を『プライドと偏見』に続いて観たが、
最後の一作は、今夜観る予定でいる。

観た後で、爽やかさが残る作品は、やはりオススメしたい。。。。。。

人は皆平等で、誇り高き者。
良心に誓って、生きるのが人間としての使命でもある。


スタンドアップ立ち上がらなければ成らない時がある。
その時には、みんなで立ち上がりたいと思う。

                                     


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by sea1900 | 2006-01-19 01:17 | 映画