たった一通の手紙
私は、今までに男性からもらった手紙はたくさんある。
それらは、すでに捨てる事が出来た。
出来た!という程度の物でしかなかった。
ところが、何年経っても捨てる事の出来ない手紙がある。
それは、海外から届いた、普段手紙なんか書かない男からの物で、
たった一通。
どうしても、書かなければ成らないと思い、そうしたのだろう。
普段は、何もしない人が書いたのには、訳があるものだ。
そう、別れを宣告する物だった。
私が彼を「男の中の男」と思ったのは、素朴で明るかったからだった。
一緒に行動出来た時の喜びは、例えもない喜びだだ。
でも、時間は容赦もなくやって来た。
海外で何度も会い、帰国する時は成田で送った事もあった。
その一通の手紙は、横書きの便箋でたった一枚。
大して上手くも無い文字で、要点だけが書いてあった。
考えれば、要点だけをかいつまんだような付き合いでもあった。
それ以後、私は暫くの間は海外に出かける事をためらった。
3年前に、彼は22歳も下の外国人と結婚した事を、
WEBに写真入りで公開した。
どうしても、何度も、何度もその写真を見てしまった。
彼はこうして、本当に好きな人が出来たんだと思うと納得する。
私には、今や昔の彼の姿が焼きついていて、
その結婚式の写真の彼は何か遠い人に思えた。
時間がドンドン流れていて、思い出さなければ、
そんな思い出も消えてしまう物なのに、
手紙という現実が、ふと過去へ連れて行ってくれた。
」
彼の結婚式の日が、私の誕生日であった事、
これは偶然なのだろうけれど、なぜか考えてしまう。
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