『山の焚火』
九州と同じくらいの面積しかないのに、その70%が山というスイス、ここに道を造り、高所にも質の高い居住性を実現する精神を持つスイス人。
この映画は、そんな名も無き山岳地帯で、農業を営む家族の話だ。
広大なアルプスの自然の中がまず、素晴らしい。
言葉を話せない弟とその姉が近親相姦の関係に成る。
やがて、姉が妊娠し、其の事で争いになり、両親が亡くなる。
雪の中に両親を葬る二人。
スイスの大自然の美しさが近親相関というモラルを打ち破ってしまう程の映画だ。
私はこれを、岩波ホールで観た。
何か不思議な映画で、起承転結という話に慣れすぎていると、理解しずらいと思う。
部屋の中で、鏡を使ったシーンがやけに印象的でもある。
この後は、どうなったのだろうか?
閉鎖的な山の中の暮らしが、こんな話を創ったのだろうかと思った。
暗い話だが、アメリカ映画にはない良さのある作品だった。
後で、スイス人の夫を持つjさんが、偶然にもこの映画を観ていたので、その話になった。
山の畑で、ひしゃくで楽しそうに、姉と弟が何か掛け合うシーンがあった。
日本人だと水を掛け合っていると思う。が、jの話では、「あれは、おしっこで、汚いと思ったよ!という事だった。
代々木上原のj夫妻のマンションに友人と、お茶を頂きに伺った事があった。
jさんは、日本人のお客さんには、夕飯だとスイス料理のフルコースで、外人だと日本料理のフルコースを作ると言っていた。
この日は、サンドイッチと二種のケーキが並んだ。
洗練された味だった。
今は、この夫妻はスイスに戻った。
私は、時々、この映画を思い出すが、この日のケーキも思い出すのだ。