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海の上のピアニスト

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『サンダカン8番娼館』




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1974年に作られた日本映画で、今は亡き田中絹代の素晴らしい演技が光る名作と言える、

作家の山崎朋子さんは、底辺女性史の研究家である。
 底辺・・・・生活の為に身をうらざるを得なかった女性達の人生は悲惨だ。それは、生きるか死ぬかという選択の末にあるものであり、自分の力だけでは、どうにも成らなかった時代でもある。
山崎さんは、女優を目指して上京するも、ストーカーに頭や顔を切りつけられて、大怪我をした。その後、全てを受け入れてくれた男性と結婚し、作家生活に入った人だ。

サンダカンとは、ボルネオにある地名で、昭和初期には、日本人が集まった所だ。
そこには、娼館が建てられ、日本から10歳とか12歳とかの女の子がたくさん送り込まれた。

皆、貧しい家の娘なのだ。
親兄弟の生活の為に、最後には、自分の身体を売らざるを得なかった女性達だ。

女性史研究家の圭子は、天草に当時の『唐行きさん』がいることを知り、山川サキという70歳前後のおばあさんと、3週間あまり暮らす事に成る。d0063550_10101157.jpgd0063550_10141688.jpg

サキの家は、畳に虫やムカデがいる、トイレも風呂も無いボロな家だったが、圭子は薦められるままに、其の畳で昼寝をする。
 サキ役の田中絹代が大女優である事は知っていたが、こんなにも、素晴らしい演技が出来るとは、初めて知った。自分の生活だって大変なのに、捨て猫にもご飯を与える。

「猫だって、命あるものじゃけん」と言うではないか。
田中絹代は、顔のしわに、全てを飲み込んだ、深い力量で、観る者の心を揺さぶる演技をする。

栗原小巻の真面目で、真っすぐな演技も好感が持てた。

d0063550_1012473.jpgこうして、女同士の共同生活が始まった。
サキは自分の生い立ちや、サンダカンでの生活や恋した事を話していく。

サキは芋を塩で茹でるだけしかしない。いや、出来ないのだと圭子は気が付いた。
 母親から、料理の手ほどきを受けるべき大切な時を、サキは持てなかったと言う事実がそこには、あったのだ。

 若い時のサキを高橋洋子が演じているが、元々、明るい顔の彼女なので、悲惨さが、軽減されていたように思った。

  この映画の良さは、昔の回想シーンよりも、サキと圭子のシーンにある。
一つ、一つの会話や、しぐさにサキの歴史を感じ採れる。

 最後に、2人が別れるシーンがある。
何か欲しい物は無いか?と、訊ねる圭子に,圭子が首に掛けている手ぬぐいが欲しいと謙虚に答えるサキに、この人間の素晴らしさを感じたのは、私だけだったのだろうか?


 圭子は、、実際にサンダカンに行ってみると、建物は皆、日本に向かって建てられていた。
ここから、日本を望み、望郷の念にかられ、其の時代に生きた女性を思うと、心が熱くなった。


原作は、映画よりも淡々としたものだった。
田中絹代をサキに重ねて観る事の出来た、素晴らしい日本映画だった。
また、この研究をした山崎さんを尊敬したい。
私はたまにこの映画を思い出す。
栗原小巻と田中絹代を、思い出すのだ。
監督は、熊井啓、日本映画もまた、素晴らしい!
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by sea1900 | 2005-06-23 09:47 | 映画